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ゆきだるま

むかしむかし、雪のたくさんふった冬のある日、男の子が、雪を集めて雪だるまを作りました。
男の子が心をこめて作ったので、その雪だるまには命が生まれました。
その日、命が生まれた雪だるまは、つぶやきました。
「どうしたのかな?変だな? ぼくの体の中で、ミシミシと音がするぞ」
雪だるまは家の屋根のかけらで出来た目で、西の空を落ちていくお日さまをにらんで、また言いました。
「お日様が明るいけれど、ぼくはまばたきをしないよ」

そんな雪だるまの話を聞いていた犬が、小屋から出てきて、
「雪だるまくん。今日は少しあたたかかったね。でも今夜はとても寒くなるよ。俺は鼻がいいからにおいでわかるんだよ。」
イヌの言った様に、夜が深くなると寒さが増して雪が降ってきました。
雪が月明かりに輝きました。
(わあ、きれいだなー)
雪だるまが見とれていると、家の中から楽しそうな声がしました。
「あの赤くめらめら動いているものはなに?」
家の中を見て、雪だるまが犬にたずねました。
「あれはストーブって言って、寒い日には世界一素晴らしい物だよ」
「ふーん。ストーブって、ぼくみたいに冷たい物なの?」
「いいや、正反対だね。ストーブをよく見てごらん。」
雪だるまは部屋で赤々と燃えるストーブを見たとたん、体の中がうずくのを感じました。
「なんだ。ぼくの身体の中で、また音がする。あのストーブのそばに行ってみたいな」
「やめておけ。あんたがストーブに近寄ったりしたら、溶けちゃうよ」
「それでも、ぼくはどうしても、あのストーブのそばに行きたいんだ」
「やれやれ。そんな事を言ったって、誰があんたを部屋に入れるもんかね」
イヌはそう言うと小屋に戻って、寝てしまいました。
「でも、ぼくはどうしてもストーブのそばに行きたいんだ」
やがて辺りが真っ暗になると、ストーブの火はますます赤くなって、とても美しく見えました。
ストーブの炎に顔がほてるのを感じた雪だるまは、また一人言を言いました。
「ああ、ぼくはストーブがとても好きになったらしい。どうしてもそばに行きたいんだ。これは、恋なんだろうか」

朝になり、イヌは雪だるまに言いました。
「今日は暖かくなるぞ。においが違うからな」
そういうとおり天気が良くなり、お日さまがギラギラと照りはじめました。
雪だるまは、だんだんと溶けていきました。イヌは雪だるまを見て、悲しそうに、
「残念だけど、俺とお前は今日でお別れかもな」といいました。

次の日の朝、イヌは雪だるまがいた所に、ストーブの火かき棒がころがっているのを見つけました。
「そうか。雪だるま君の体はストーブの火かき棒がしんになっていたのか。それで、ストーブのそばに行きたがっていたのか」
やがて家の人が火かき棒が落ちていることに気づいて、部屋に持って帰り、ストーブのそばに置きました。 こうして雪だるまは願いがかなって、ストーブのそばに行くことができたのでした。

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