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ちんもくはカネにあらず

むかし、むかし、あるところにおまんじゅうの大好きなおじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、二人は、近所の人からいただいたおまんじゅうを家で食べていました。
「おいしいね。ばあさん。」とおじいさん。
「おいしいね。じいさん。」とおばあさん。
二人は、幸せそうに次から次と食べて、とうとう最後の一個になってしまいました。
おじいさんが手を伸ばすと、おばあさんが手を伸ばします。おばあさんが手を伸ばすと、おじいさんが手を伸ばします
「勝った方が、明日まんじゅうを食べられることにしよう。明日まで黙っていられた方が勝じゃ。声を出したら負けじゃ。いいかい。ばあさん。」とおじいさんが言いました。
「いいですよ。じいさん。」
ふたりは、約束すると、最後のおまんじゅうを棚の上に置いて、床につきました。
その晩、家の入り口から何やら物音が聞こえてきます。なんと家に泥棒が入ってきたのです。二人は、泥棒に気がついていましたが、じっとしていました。声を出したら、おまんじゅうが食べられなくなるからです。
「こいつはうまそうなまんじゅうだ。」と泥棒は言うと、手に持って口に入れようとしたので、
「どろぼう!」ついにおばあさんが声を出してしまいました。
「しめた。わしの勝ちだ。まんじゅうが食えるぞ。」とおじいさんは喜びましたが、
泥棒は、たいそう驚いて、まんじゅうを口にくわえたまま逃げていきました。

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